東京理科大学の提案 実現は困難 

 

東京理科大学の提案 実現は困難
  9月9日の久喜市議会全員協議会において、東京理科大学から提案されていた同大学経営学部久喜キャンパスの移転後の跡地利用の提案(要望)について、市は実現は困難との見通しを明らかにした。

これまで市は、同大学の久喜キャンパス全面移転の意向に対し、できる限り同キャンパスに学生を残して欲しいなどと意思表示をしており、平成24年6月13日(水)には、同大学理事会で“平成28年4月から、2年生以上を神楽坂キャンパスに移転させ、同キャンパスに通う1年生の定員を240人から300人に増員する”ことが決定されていた。
しかし、平成26年4月28日には、同大学理事長等が市役所を来訪し、市長にこれまでの説明と違う“平成28年4月から全ての学生を神楽坂キャンパスに移転させたい”等の話をし、さらに同年6月17日に同大学理事長等が市役所を来訪し、市長に同様の文書を持参していた。市はこの文書を受理しなかった。

その後、同年6月25日には、市は同大学に対し、平成24年6月13日の同大学理事会で決定していた“平成28年4月から、2年生以上を神楽坂キャンパスに移転させ、1年生は同キャンパスに残す”ということと、久喜キャンパスの将来構想を明らかにすることを要望。
市は、この時に、同大学から同年6月17日に持参され市が受理しなかった文書を受理していた。

しかしながら、同年7月16日には同大学理事長等が市役所を来訪し、市長と議長に面会。その席で、同年7月9日の同大学理事会で“平成28年4月から、経営学部久喜キャンパスを神楽坂キャンパスに全面移転する”“全面撤退にあたっては、久喜市の意向を尊重し、進めたいと考えている”と決まったとの報告文書と全面撤退後の跡地利用と教育基金設置の提案(要望)文書が提出されていた。

提案(要望)では、久喜キャンパスの全面撤退後の跡地は、同大学に購入の申し出があったレッドウッド・グループ(株)に販売し、この企業が物流施設を建設する予定であることから、市に物流施設を建設するための用途変更を求めている。さらに、提案(要望)には計算式や根拠は全く示されていないが、レッドウッド・グループ(株)に販売した場合の久喜市のメリットとして地元から1500人から1800人の雇用が生まれ、固定資産税が年に約3億2000万円ほど久喜市に入る予定などと示した。また、レッドウッド・グループに販売できた場合には、売却代金の一部である5億円を久喜市に寄付するとしていた。

久喜市議会全員協議会では、市は、この提案(要望)にある同大学がレッドウッド・グループ(株)に販売し物流施設を建設するために必要な土地の用途変更には、土地の計画的な利用の前提であり上位計画である久喜市総合振興計画や久喜市都市計画マスタープランなどの変更が必要になり、そのためには両計画の策定手続きである市民参加や議会の議決が必要となるので、実現は困難との考えを示した。また、実際に同地に物流施設が建設された場合の周囲の道路環境や生活環境の計画見直しと整備などが必要になり、土地の用途変更は困難と付け加えた。
さらに、同大学に対しては同年8月8日に同大学事務総局長等が市役所を来訪した際に、副市長から、仮に全面撤退するとしても研究施設や他の大学の設置など教育施設としての利用をしてもらいたいと要請したことを明らかにした。

(ちょい一言)
平成26年7月16日の文書で同大学が提案したレッドウッド・グループ(株)は、物流不動産の投資会社である。仮に物流施設が建設できるようになったとしても、実際の使用者は別の企業になることだろう。そうすると、同大学が売却し手を離れた後に、どの程度、久喜市の意向が尊重されるのか。どう担保されるのか。同大学は、納得できる説明と法律的な根拠を示す必要がある。

同文書では、同大学は「久喜キャンパスの全面撤退(跡地の有効利用等を含む)にあたっては、久喜市の意向を尊重し、進めたいと考えていますので、ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」と述べた。
“意向を尊重する”としながら、この文書とともに、一方的に要望を含む提案(要望)文書を市に出すのは、筋が違うのではないか。

全面撤退した場合の市の意向は「東京理科大学の研究施設や他の大学の設置など、教育施設としての利用」であることが8月8日に同大学に示されている。
先ず同大学は、この意向を尊重できるように努力することが先決である。
加えて、市民や地元地区に対して、これまでの関係を考慮した上での配慮、対応が必要である。

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