埼玉県立久喜図書館、同熊谷図書館を閉館し熊谷市に整備予定の「北部地域振興交流拠点」A棟に新たに「新埼玉県立図書館」を設置する方針が、令和7年2月21日の県教育委員会で決定した。
また、同日の同委員会では、「北部地域振興交流拠点」に窓口機能などを配置し、書庫やその他の機能を熊谷市内の「県熊谷地方庁舎」A駐車場に新たに建設する方針も承認した。
同教育委員会では、「社会のデジタル化の進展など時代の要請に応じた図書館サービスを実現していくため」として、「新埼玉県立図書館基本構想」を令和5年にまとめていた。
「新埼玉県立図書館」では、「埼玉ゆかりの地域資料の収集・提供・保存機能」「デジタルライブラリー機能」、「県内図書館サービスの補完・つなぎ・支援機能」、「交流・価値創造機能」をもたせるという。
同委員会は
1.デジタル技術を最大限に活用した非来館型サービスを中心とすることを目指しつつ、相当期間残る紙資料を使ったサービスのための、コンパクトなスペース(閲覧スペースや受付カウンター、研修・講座スペースなど)を設ける。
2.紙資料等はオープンスペースに配架しないことを基本とし、適切に保存できる閉架書庫を設ける。
3.効率的な搬送のために資料を1か所に集約し保存するとともに、資料仕分けや荷下ろしスペースなど必要な施設を設ける。
としている。
「北部地域振興交流拠点」A棟は、県の計画で令和14年度内の完成を目指しているが、これに伴う同県立2図書館の閉館時期等の詳細は明らかになっていない。
同委員会では、今後、基本計画を策定していく中で検討していくという。
同久喜図書館は昭和55年、同熊谷図書館は昭和45年に開館し2館合計で約160万冊の蔵書がある。
<ちょい一言>
埼玉県立久喜図書館は、13年前に県教育委員会から統廃合案が発表されて今日に至っている。平成24年には県が今回と同様に、当時3館(久喜市、熊谷市、さいたま市(浦和))あった県立図書館を1館に統合し熊谷市に整備予定の「北部地域振興交流拠点」に移転する案を示していた。
しかしながら、「北部地域振興交流拠点」の整備が進まないことから、前述の統廃合も事実上の棚上げとなっていた。
平成24年当時、私は、県のこの唐突な発表に驚き、久喜市議会議員として「埼玉県立久喜図書館の存続を求める意見書」の素案を作成、同意見書の提出を他の会派にも呼びかけて、共同提案、全会一致で可決した経緯がある。宛先は当時の知事と教育長だった。
その後、同意見書は当時の市議会議長が知事と教育長に届けたという報告も議会にあった。
また、私は、当時地元から選出されていた自民党県会議員にも会い、口頭でお願いをしていた。
それから、13年が経ち、県教育委員会では同久喜図書館と同熊谷図書館を閉館し「新埼玉県立図書館」を熊谷市内に整備予定の「北部地域振興交流拠点」に設けるとともに、書庫やその他の機能も熊谷市内の「県熊谷地方庁舎」A駐車場に新たに建設する方針を改めて決定した。
令和5年10月策定の「新埼玉県立図書館基本構想」でも既に方針が発表されていたが、この構想を基に同委員会の意思を決定したものだ。
確かに、同委員会が言うように初めに埼玉県立図書館の統廃合を進める案が出た13年前とは、社会状況は異なる。
少子化も進み、県内は人口減少化がさらに進むと予想されている。同委員会が令和4年に行った県立図書館の利用者は、回答者の11.7%が一度も利用したことがなく、利用しない理由の約6割が「居住地から遠い」と回答している。同委員会の調査では、同久喜図書館の令和6年度末の利用登録者に占める久喜市在住者は58.7%を占めているという。
また、同委員会の調査では、平成26年1年あたりの同久喜図書館の新規利用登録者数は、2,327人から令和5年には1,278人と9年間で半減し1,149人となっている。貸し出し冊数も平成26年の12,457冊から90,521冊と31,936冊減少した。
デジタル化による非来館型と貸し出し希望者に、新県立図書館から最寄りの図書館に搬送することで対応するおおまかな方針は理解できる。
同委員会は同県立図書館の閉館理由について、市町村立図書館と新県立図書館の役割分担を進めることを理由の一つに掲げているが、市町村立図書館が今後も今のスタイルのまま存続するとは限らない。
県立・市町村立図書館のデジタル化などが進めば、どこで紙媒体の書籍と触れ合うのか。紙媒体の書籍を通じて、人間同士の交流はどのように行うのか。県が紙媒体の書籍との関わりを消極的に考えていることは受け入れがたい。
また、同久喜図書館は、現在、障がい者への「朗読サービス」「点字サービス」「録音サービス」などをボランティアの協力も頂いて、長年実施してきている。同久喜図書館ならではの特色あるこれらのサービスがないがしろにされてはならない。
同久喜図書館の用地は、同久喜図書館の建設誘致のために土地は、当時、久喜市が提供した経緯も無視できない。
同久喜図書館は既に耐震化工事も終了している。閉館後の建物利用については、地元久喜市の意向を尊重することが第一だ。
その上で、現在の同久喜図書館が同地で県民になじみが深い事業・必要性の高いサービスの存続など進めるべきだ。