久喜市教育委員会からアンケート回答誘導の疑い |
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先週から久喜市教育委員会は小中学校の給食費に関するアンケートを保護者に実施したが、資料、回答(選択)が教育委員会が期待する回答を誘導する内容となっている。
久喜市教育委員会では、食材などの高騰を理由に給食費の値上げを前提に、給食費の見直しの検討をはじめているが、今年度からは小中学校の学校給食の計画や給食費等について教育委員会の諮問に応じて審議、検討する久喜市学校給食審議会を開催し、値上げ案が了承されれば来年度から新料金を適用する予定だ。 問題のアンケートは9月9日付けとなっており、先週中ごろから児童、生徒を通じて保護者に配布され、今日が回収締切日となっている。 アンケート実施の理由については、「保護者の皆様のご意見を伺い、学校給食費の改定を検討する際の参考とさせていただきたく、アンケートを実施することといたしました。」(久喜市教育委員会「給食費に関するアンケートの実施について(通知)」平成20年9月9日 久教学第1460号)としている。 そして、このアンケートでは、今後の給食について予想されることとして次のように掲げている。 また、選択制になっているの回答は、 問題となっているは、後述した選択制の回答の部分で、予想される部分と回答が対応していないことだ。 予想されることの②と③は、新学習指導要領の下では、給食回数の増加が必要で、今の給食回数を堅持すれば授業時間の短縮になり、弁当持参回数が増えるという同義のことを言っているので、予想されるのは、①の食料品価格の高騰による予想と②、③の学習指導要領による予想に峻別することができる。 これらの回答で特に問題なのは、「値上げはしないでほしい」の前に「給食回数や質が変わっても」という誘導する一文が掲載されているとともに、世論調査などでは、同じ条件での「賛成」「反対」という選択回答を用意するのが、一般的かつ常識的なもので、本来は予想①、②③に対してそれぞれ、賛成と反対の選択回答があるべきだが、これには用意されていないことだ。 さらに言えば、アンケート裏面の資料に掲載されている平成16年度からの給食食材の値上げ一覧表には、一部食材の年度ごとの価格が掲載されているが、平均なのか、年統一価格なのか、最高値時なのか最安値時なのかの表示もされておらず、正しい比較すらできない。しかも一覧表には食材として使用されている一部だけを抽出している。 給食回数の増加やトータルで見た食材料費の高騰であれば、給食費の値上げもやむを得ない。 今回のアンケートにより教育委員会の姿勢への不信が一部保護者に広がったことは否めない。 |
(ちょい一言)
どうしても給食費の値上げが必要であれば、誰でも理解できる理由とそれを公平、公正に提示して賛同を得るしか方法はないはずだ。
値上げ自体に、はじめから反対をしている訳ではない。
今回問題としてとらえているのは、公平なはずの行政が回答を誘導する内容と思われるものを配布したことと、この集計結果を給食費見直し(値上げ)の参考に使用しようとしている点だ。
たまたま、大学院で世論調査の第一人者から世論調査の方法、分析に関する理論や実証について一定期間、レクチャーを受け考察もしたが、今回の教育委員会が行ったアンケートのような選択回答は、一般的、常識的にはありえない。あってはいけないものと理解している。
今回のアンケートの目的は、回答者である保護者の意見を伺うことだ。意見を求める上で、恣意的内容が含まれれば、これは公平に意見を聞いたことにはならないだろう。世論調査などでは、極力、恣意性が働かないように最善最大の注意を払うことが鉄則となっている。これがなければ、集計結果の信用を失うと同時に本来の回答者や世論の趣向をつかむことができず、結果的にはアンケートや世論調査を行った内容での喧伝だけに終わることになるからだ。もっともはじめから喧伝、PR効果を目的とした類は山ほどあるが。
今回のアンケートは読めば読むほど、「値上げやむなし」を刷り込むものになっていることは疑う余地がない。これが「値上げ理由」のPRとして効果を期待されたものであれば、その期待は裏切らないだろう。
しかし、前述のように恣意性が働くことによって、このアンケートでは回答者の本当の趣意を把握することはできず、結局は後々の混乱につながっていくことになる。教育委員会はことの重要性を認識すべきだ。
ついでに言えば、今回のアンケートでは教育委員会が実施したものにも係らず「市としましては・・・見直しを検討しているところでございます。」とまるで当事者でないような表現がある。気になるところだ。